究極のジャガイモを食べよう! 日記 2026/08/14
遺伝子組み換えで作られた究極のジャガイモを食べないか?
学生時代の友人からそんな話を聞き、茨城県まで行きました。茨城県が犬だとすると首根っこのあたりです。
研究所がある町には電車がないそうで最寄りの駅から路線バスに乗り換えて1時間ほど。究極のジャガイモを食べるためと考えるとこの時点で損ではあります。
なぜそんな不便なところに研究所があるかというと土地代が安かったからとのこと。夢がないね
遺伝子組み換えというと、「遺伝子組み換えでない」という形で広く知られている技術ではあります。世間の反応は若干ネガティブかもしれませんが、私は自分の遺伝子を組み替えて指紋をぶっとい1つの丸にしたいと思っていますので、割と肯定的です。
フライドポテトなのか肉じゃがなのか。ポテトサラダならきゅうりを抜いてほしい(きゅうりは草刈りの後と同じ匂いがするので)なんてことを考えていると指定されていた場所につきました。白を基調とした清潔感のある建物で、幾何学的なモチーフがあしらわれています。研究所すぎる。
エントランスで待っていると待ち合わせの時間を少し過ぎたあたりで友人が現れました。
「なんだ! 律儀に待ってたんだ。勝手に入ってよかったのに」
「よくないでしょ。だいたい、入館証持ってないし」
友人が通ってきたセキュリティゲートを指さす。
「いやいや、田舎って鍵かけないから。鍵かけると周りの人信用していないってことになってご近所づきあいに響くんだって」
研究所もご近所づきあいからは逃げられないとは。遺伝子組み換えの研究所なんてどう考えても近隣住民からよく思われないだろう。石を投げられないための健気な努力なのかもしれない。
「まあ、入って入って」
促されるままに研究所に入る。通されたのは事務机が並ぶオフィスだった。研究所らしくないと思いましたが、意外と事務作業が多いとのこと。
「これがね、究極のジャガイモ」
そういって取り出しのは紫色で極端に長いジャガイモだった。
「こんなに見た目が変わってもジャガイモなんだ」
「遺伝子ってすごいよね」
見た目はジャガイモからはかけ離れていますが、まあ問題なのは味です。
異形のジャガイモはどれだけおいしいのか。
蒸かしてバターをのせて食べるのが一番とのことなのでじゃがバターでいただきます。
澄み切った冬ばれの日の夕焼けのような黄色い断面に載せたバターはすぐにゆるんで形を失っていきます。
フォークで芋を掬い取ってバターが垂れないうちに口に運ぶと。
甘い。
甘いのですが自然派の範囲を超えない甘みとバターの塩加減やコクが見事にマッチしています。
これは…………
「す~~ごいサツマイモ」
「……やっぱバレるかな」
不安そうな友人。サツマイモを新種のジャガイモと言い張る大勝負に出たのと同じ人間には思えない。こういう時は堂々としなくてはいけない。まだまだ、詐欺のイロハがわかっていないようです。
「わざわざ、在来線を乗り継いでさらに路線バスまで乗らせたところはすごい良かったと思う。それだけの労力をかけたら信じたくなると思うし。
でも、この食べ方はサツマイモすぎる。ほぼ焼き芋だから知っている味になっちゃうよ。そしたらやっぱり気づかれるし、究極のジャガイモなのにバター付けるんだって思うと冷静になっちゃう、
それから、演出とかはもっとやれたはず。例えば食べる場所はラボの中にしてみるとか警備ももっと厳重にするとか、非日常の緊張感は判断を狂わせるから。」
「う~ん、そうかあ。非日常を体験させ続けなくちゃか。ラボの中で育てている様子見せたり、駅まで迎えに行って目隠しのまま車でラボまで運んだりとか、いろいろできそう! うん、やってみるよ!」
そのあとは最寄り駅の土間土間で飲んだ後、お土産にサツマイモチップスをもらって帰りました。