恐怖! 煮込み料理のレシピ本を7冊盗む万引き犯 -日記2026/08/23

基本的には電子書籍で読むようになったのですが、古い本は電子書籍になっていないこともありますし、新しい本や知らない分野の本と出会うために書店に行くこともあります。チェーン店ではない個人経営の店のほうが思想のあって品揃えが尖っているので見つけたら入る用にしています。

今日も出先で見かけた本屋に入りました。全国展開している書店が明るく白い蛍光灯で煌々と照らされているのに対して、個人店はほんのり薄暗いオレンジの照明なイメージがあります。この店もその例にもれず、心地の良い薄暗さをしています。仄暗い照明は「本選び」という心を全裸にする行為の気恥ずかしさを軽くしてくれますが、やはりどうしても薄暗い空間では光の代わりに魔が差してしまうものです。

書棚の周りをふらふらと歩いていると誰が詰められているような声が聞こえてきます。そのやり取りはバックヤードから漏れ出ているようです。
「ほら、バッグの中! 全部出して、全部!」

万引き確定です。書店は特に被害が多いと聞いていましたが、やはりそうなんですね。バックヤードの入口に一番近い棚の前に移動し一冊一冊丁寧に確認します。

当然やり取りが聞こえてしまいますがそれは仕方がない。だって音って漏れ出るものだから。

「まだ開けてないポケットあるよね、それも!」
「いや、でもこれは……」
「いいから!」

ゴトリ

それからしばらくの静寂。

「なんでそんなの出すかな! ウチで売ってるみたいになるよね!」
店員が再度大声を出す。良かった生きていた。
「だから言ったじゃないですか! このポケットは開けないほうがいいですよって!」
「それは言ってなかった!」
確かに言っていなかった。冷静な店員だ、もしかすると店長かもしれない。


「それ本物? 本物だったらだいぶ困るな」
「本物って言われたから買ったんで、本物のはずです。持ってみます? 結構ちゃんと重いですよ」
「いいのね? ちょっと貸して」
「あっ、もう今、指紋ついたんで!」
「ああ!? ふざけんな! 撃つぞ、マジで!」
「いや、撃てないでしょ。説明書読んでないし」
「……確かに説明書は読んでないけど」

こいつら面白すぎる。各地の書店を回ってこういう興行をしている旅芸人の可能性すらある。私もどうせならそんな仕事が良かった。どこに求人があるんだ? Indeedか?

「もう、これで警察は呼べませんからね。べったり指紋付いてるし、『撃つぞマジで』って言ったし」
「クソっこんな手口あるかよ。万引きして捕まったときに店員に触らせて警察を呼びにくくする用の銃をカバンに入れとくとか…… 俺が銃とか触ってみたいタイプじゃなかったらどうするつもりなんだ」
「そういうときは銃の正しい使い方をしますよ」
「人殺しの道具に正しい使い方なんかないんだよ!」
やはり個人店の従業員だ、明確な思想を持っている。

「警察呼ぶつもりだったけど、一気に面倒になったなあ。正直対応したくない。もういいや、ウチの商品返してくれたら、それでいいから。」
「恩に着ます」
「着るな! 縁切りたいんだよ、こっちは! はい、全部で7冊ね。ラインナップもキショいんだよ、煮込み料理のレシピ本7冊万引きするやついないよ」
「ありがとうございます!」

そのまま万引き犯が出てきそうだったのであわててその場を離れました。

その時に視界の端でとらえた犯人はなんと……………………………………………
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こわ~~~