老婆から占いと言い訳をカツアゲした日 - 2026/08/29

喫茶店で作業をすることが多いです。普段座っている椅子だと見える景色が変わらないですし、外を歩くことで考えがまとまることもあります。
知らない駅で降りて少し散歩した後に喫茶店に入るのがいつものルートです。

今日も適当な駅で降りて栄えてそうな方を歩いていたところ
「ちょっとアンタ、占いどうだい?」
といきなり声をかけられました。

振り返ると折たたみ机の後ろでこじんまりとした老婆が簡易的な椅子に座っています。
「占い……」
いわゆる辻占い師というものでしょうか、今時そんなことをやっているが人いるとは。
正直なところ占いはあまり信じていません。何座かどうかで今日のラッキーアイテムを決められてはたまらないから。12分の1の確率でおそろっちになってしまう。
だいたい占いというのは誰にでも当てはまることを言うか相手が言ってほしい言葉をかけているかなのだ。その言葉のキレでよく当たる占い師かどうかが決まる。
それっぽいことを自信満々に言われればなんとなく信じたくなるし、占いを頼る人も断言してほしくてお願いしているところがあるから無責任に言いきっても怒られない。
人間観察とはったりのゲーム、それが占い

ただ、ここまで占いを信じていないと「逆にあり」なのかという気もしてきます。正直言って仕事やら恋愛やら将来やらで気になっていることはある。
占いを信じていないからこそ、占い結果を言われて反発心を覚えないことは自分の心の中でひそかに望ましいと思っていることだともいえるような気がする。
相談するだけならしてみても? いいのかな?

「じゃあ、せっかくなんで」
「はい、どうもね。じゃ生年月日と生まれた時間を教えて」
生まれた時間なんて把握してないよ、と一瞬思ったが別に本気で占ってほしいわけではないから適当でよいのだ。
「2001年5月8日 生まれたのは午後1時ぐらい? だったような」
「はい。まあだいたいでもいいよ。それじゃあ占っていくからね」

そういうと老婆は鞄から何やら小さな箱を取り出した。白い紙箱に赤い線が引かれている。箱の側面には老爺の顔が印刷されており、上部には「KFC」の文字が入っている。
まごうことなきケンタッキー・フライド・チキンの箱である。
老婆はその箱を開けるとフライドチキンをつまんでむしゃむしゃと食べ始めた。

「ちょっと! お腹すいちゃったんですか? 今じゃないでしょ」
「まあまあ、見ておれ」
老婆は数分でチキンを食べ終わると、残った骨をテーブルの上に置いた。

「うむ、近い将来大きな転機が訪れるだろう。望ましい結果が得られるかどうかは精進の具合によると。そしてこのままいくとその大きな転機の後に失敗をすることになる。それを回避するにはよい休息をとれとのことだ」
「そんなことより、何だったんですか? フライドチキンは?」
占いの内容は本当にどうでもいいことしか言わないので全く頭に入ってこなかった。

「見てわからんか? 残った骨を見て占ったのを。昔の中国では亀の甲羅に火をいれて、できたヒビの形で占ったという。これはそれと同じこと」
「ケンタッキーのチキンの形って5種類しかないらしいですよ。ってことは5通り?」
駄菓子についてる占いでももう少し頑張っているだろう
「あ~いや、骨を置いたことで紙ナプキンに油じみができただろう。この形からも占っているから、5通りではない」
あちこちに目線を向け、肘や肩をせわしなく触りながら老婆が言う。
こんなに苦しい言い訳をする老人を始めてみた。逆に得した気分になってくる。老婆から言い訳をカツアゲしている気分だ。

「っていうか、生年月日と生まれた時間関係ないじゃないですか! あれなんだったんですか?」
「あれは、まあそういうの聞いとくと、それっぽいから」
渡した情報を返してほしい気分だ。どうやるのかは知らないが。

そのあと代金として2000円を請求されたので215円だけおいて走って逃げた。私は陸上部だったし相手は老婆だ、造作もない。